むかしむかし、あるところに、一人(ひとり)のあくまがおりました。
ある日(ひ)、そのあくまは、とくべつなかがみをつくりました。 そのかがみにうつると、うつくしいものはゆがんで見(み)え、つまらないものはすばらしく見(み)えたので、そのかがみをのぞいた者(もの)は、みなこんらんしてしまいました。
「これは、ゆかいだ!」
あくまは自分(じぶん)のつくったかがみがおこすそうどうに、わらわずにはいられませんでした。どこへいくにも、このかがみをもっていき、人間(にんげん)たちをこまらせていたのです。
しかし、あるとき、手(て)をすべらせて、かがみを地(じ)めんにおとしてしまいました。かがみは、たくさんのかけらとなってくだけちりました。
かがみのかけらは、せかい中(じゅう)にとびちり、たくさんのふこうを、ひきおこしました。なぜなら、そのかけらが、人間(にんげん)の目(め)に入(はい)ると、なんでもわるく見(み)えてしまいますし、
そのかけらが心(しん)ぞうに入(はい)ると、氷(こおり)のようにつめたい心(こころ)のもちぬしになってしまうからです。
そして、一(ひと)つのかけらが、ある町(まち)におちたのです...。