「天の川の西の岸にすぎなの胞子ほどの小さな二つの星が見えます。
あれはチュンセ童子とポウセ童子という双子のお星さまの住んでいる
小さな水精のお宮です」
そんな書き出しで始まるチュンセ童子とポウセ童子の心が優しくなる天上世界の物語。
◎『双子の星』第一部(26分54)
◎◎『双子の星』第二部(24分51)
◎◎◎『手紙 四』(特別収録/7分21)
『双子の星』は、宮沢賢治が22歳の頃に創作した最初期の作品です。
(『注文の多い料理店』収録の物語は、賢治25歳頃に執筆されています)
こんなお話をつくってみたと言って家族に読み聞かせたという話が残っています。
ちょうど賢治が法華経にふれはじめた時期にあたり、双子のお星さまの行動に
その純粋なまでの気持ちが込められています。このチュンセとポウセは、
チュンセ=賢治、ポウセ=妹・トシとして読むことができます。
『双子の星』...、それは賢治が妹トシを喜ばせたくて書いた物語ともいえるでしょう。
●宮沢賢治(みやざわ・けんじ)
1896(明治29)年8月27日生~1933(昭和8)年9月21日没。岩手県花巻生まれ。
ふるさと岩手を心象風景の理想郷"イーハトーブ"と呼ぶなど、独特な感性と
自然観で捉えた作品を多数遺す。農業指導・研究家として活動し、教職を務めた後、
「羅須地人会」を設立。農民生活向上のため粉骨砕身するが肺結核に倒れ、世を去った。
死後、彼の創作は高い評価を受け、国民的作家となる。天体や鉱石に深い造詣を持つなど、
その世界は現在でも研究され、多くの人に親しまれている。代表作『銀河鉄道の夜』
『風の又三郎』『注文の多い料理店』、詩集『春と修羅』など。